特集 スカイプでつなぐ高等学校の国際授業から 西宮の伝統芸能「えびすかき」をバリ島の高校生に披露(176号)
高校生に、国際的な視野を広げてもらうことを目的とした、日本と海外高校生をつなぐスカイプ授業(※1)を全国の学校に展開しようと創設した㈱With The World代表の五十嵐駿太さん(26歳)。大学生のときに経験したスラム街の子どもたちに対するフィリピンでの海外教育支援活動を通し、同じ地域内にあるスラムの状況を地元の学生があまり理解していなかったことに気づきました。どの地域においても地元の課題に目を向ける機会は少ないのではないかと感じた五十嵐さんは、地域にある課題を、将来を担う若者たちが現状を知り打開していく力をつけていかねばと生み出したのがこの事業です。それぞれの国の学生が互いの国の実情を伝え学びあうことで、異文化の視点から社会問題点を見つけ、地域産業を巻き込みながら打開策を考えていこうとするものです。
昨年初めて、西宮市の関西学院高等部とインドネシア バリ州のハラパン高校を結び、スカイプ授業を1年に渡って実施。互いに刺激しあい、予想以上に積極的な取り組みになり、受け入れた高校側からも高評価です。ハラパン高校生はこの期間中に西宮に訪れ、関学生とともに西宮の伝統文化に触れる機会をもちました。
西宮神社は、ユネスコ世界文化遺産に登録された文楽・人形浄瑠璃の源流である人形回し「えびすかき」があります。すでに140年以上途絶えていましたが、阪神大震災後、郷里に誇りを持とうとこの貴重な文化遺産を地域住民(えびす座)が再興しました。そして多くの成果を上げていることを、関学の生徒とともに学び、「えびすかき」を体験し、西宮神社のおこしや祭りにも参加しました。こういった繋がりから、西宮の伝統芸能により多くのバリの高校生が触れてほしいと、この2月に人形芝居えびす座がバリに出向き、「えびすかき」を披露したのです。
ハラパン高校では、国際担当のユニタ教諭と五十嵐さん、生徒たちが司会や通訳、会場準備を進めます。そして約300人が講堂に集まり、「えびすかき」に大きな拍手が送られました。さらに、バリ在住で、バトゥール湖周辺に環境保護活動として植樹を進めている光森氏や国立キンタマーニ高校の副校長オカ氏らの協力で、国立キンタマーニ高校2年生が鑑賞。生徒たちは「〽ツ〜ローヨ ツ〜ローヨ(釣ろうよ)」と一緒に唄を歌うなど大盛り上がりでした。
「高校では祭りの鬼を制作したり、民族楽器ガムランの演奏も練習していました。伝統芸能を誇りに思うバリの若者たちの感性に驚きました。言葉も分からないのに笑い所を捉え、歌や手拍子をすぐに自分のものにしています。西宮に住んでいても『えびすかき』を知らない市民もたくさんいます。新旧が混じり合って豊かな街になっていきます。魅力的なまち、住みよいまちにするには感性の豊かさが求められます。互いに交流を深め刺激しあって自分たちが暮らす地域のあれこれに気づいてほしいです」と座長の武地さん。
「今後も、こうした様々な人の協力を得て、実践を含めた交流を授業に展開できれば、更に魅力的な授業になっていくと思います」と、五十嵐さんは話してくれました。