特集 西宮今津高等学校 演劇部「海鳴り」 春季 全国大会初出場(172号)

西宮今津高等学校 演劇部「海鳴り」
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 昨年、県大会で最優秀賞、近畿大会で優秀賞を受賞し、この3月の春季全国高等学校演劇研究大会の出場を決めた兵庫県立西宮今津高等学校演劇部。卒業式を終えた3年生2人と2年、1年の総勢4人の部員で全国の舞台に挑みました。演劇に打ち込んだそれぞれの想いを聞いてみました。

西宮今津高校「海鳴り」

西宮今津高校「海鳴り」綾子の亡霊(左)と話す母泰子

作品は「海鳴り」。顧問である銘苅(めいかり)千栄子教諭の創作です。戦後の沖縄を舞台とし、疎開船・対馬丸の史実を背景にしたものですが、それに留まるものではありません。  同校は、これまでも戦争などの社会問題に向き合う作品を多数上演しています。高校演劇は等身大の高校生を描くものが多い中、こうしたテーマは演じる部員にとっても観客にとっても身近とは言い難いものなのです。「だからこそ、上演する意義があると考え、過去の出来事としてではなく、現在を生きる自分たちが向き合うべきことと捉え、歴史的な背景を学び、理解を深め、そこから浮かび上がる人の生き様を、伝えるということを大切に取り組んでいます」と銘苅さん。  脚本は生徒から「こうしたテーマで書いてほしい」など要望が出され、それを元に毎回顧問が書き下ろしているのです。「今回は、役者3人をじっと見ていたら、天から一気にストーリーと台詞が降りてきた」そう。演じながら生徒たちで変化させて出来上がっていきました。

「海鳴り」

「海鳴り」死んだ綾子の友達の妹 佳子

◯死んだ綾子の友達の妹 佳子 神野萌花さん(1年)
今まで戦争という言葉自体が怖くて、戦争のニュースは避けてきました。この作品で戦争で生き残った人の役を演じることで、戦争の酷さ怖さを自分のものとして向き合っています。少し成長したように思います。

◯綾子の亡霊 森 新菜さん(2年)
戦争の悲劇は人が死んでいくということに当てられますが、それによって日常が壊われていくことが恐ろしいと感じました。娘と母の〝さりげないやりとり〟が壊われていくのです。亡霊の魂はここにあっても、手を差し伸べたいが差し伸べることはできないのです。それをどう理解し、表現すればいいのか、考えさせられます。

◯綾子の母 泰子役 西村史織さん(3年)
私の将来の仕事は演劇ではなくデザインです。しかし、演劇で得たことは、志す「夢」に大きな影響を与えています。物事を様々な角度から感じ、考えられるようになったと思います。

◯演出・照明 岩本茉子さん(3年)
私は演出として台本を客観的に分析することから始めます。声や動作、効果を含めて立体的にどう見せていけば、自分に感動を与えられるかを課題にしています。卒業後は大学で舞台づくりを専攻します。

最後に、教壇に立ちながらピッコロの演劇学校に通い舞台に立つ経験をした顧問の石井美佐子教諭は、「役を演じるには、自分と向き合わないとできないのです。高校生が演劇を体験することは意義深い」と話してくれました。

「海鳴り」の舞台練習風景(西宮今津高等学校 演劇部の部室)

「海鳴り」の舞台練習風景
(西宮今津高等学校 演劇部の部室)

◆ 物 語
戦争が終わって11年、沖縄県辺野古。大浦湾に面した瀬嵩集落。海風が吹き込む小さな家に一人住む母泰子。一人娘だった綾子は疎開船・対馬丸に乗ったまま帰ってこなかった。しかし、あの日のことを語り伝えてほしいと死んだ綾子は、嵐の日に母の前に姿を見せる。この家にしばしば訪ねてくる佳子。対馬丸から戻った数少ない生き残り。それぞれの心に閉ざされた思いが、海鳴りの響きとともにぶつかり合い溶けていく。

◎後列左から、音響協力の山本晃さん(3年)、岩本茉子さん(3年)、石井美佐子教諭、前列左から、銘苅千栄子教諭、西村史織さん(3年)、森新菜さん(2年)、神野萌花さん(1年)