特集 世界規模の課題にローカルに、かかわり合いと支え合いの中で愉しくつながる トランジション・タウン西宮(180号)
世界の急激な変化・情勢を捉え、これからの新しいまちづくりにと様々な活動が展開されています。とももは、そのような活動に市民が自由に参加し、参考にし、暮らしをより良くできることを願い、随時紹介してまいります。第1回目は「トランジション・タウン西宮」です。
「トランジション・タウン西宮」を発起した永谷タイさんは、西宮中央商店街にある「あんのん舘」を拠点に活動を展開しています。
あんのん舘は、永谷さんの父親の弘さんが阪神淡路大震災のあと、〝未知=Unknown(アンノウン)〟の世界を〝安穏(あんのん)〟に生きることを願い、建てられました。弘さんが他界したあと、「この建物と父の想いを引き継ぎ、あらゆる人が集える場としていこう」と心に決め、カフェ「ココハネ」とヨガスタジオ「あわい」を開きました。
そして、時と想いを重ねあわせながら、自分たちの手で改装し、パーマカルチャーデザインによる場づくりをしています。パーマカルチャーとは、自然と調和した持続可能な暮らしと社会を築くためのデザイン手法で、永谷さんが場所や人との関係性を育む時に大切にしている考えです。
トランジション・タウンは、パーマカルチャーをベースに、気候変動、エネルギーと経済、大きなシステムへの依存といった世界規模の課題に対して、ローカルに繋がることで持続可能な社会へと〝移行〟するための社会的ムーブメント。大きなことや特別なことをするのではなく、関わり合いと支え合いの中で愉しくつながるのがモットー。それによって、小さな一人ひとりの能力を発揮し、問題を解決する、という考えです。2005年頃からイギリスで始まったこの運動は世界中に拡がり、日本でもこれまでに100以上の地域で実践されています。
阪神大震災後の復興で都市開発が進み、アーケードのかかっていたかつての商店街は、大型のスーパーマーケットや無機質な高層マンションに立ち代わりました。ここに暮らす人、働く人が繋がることで、有機的なコミュニティを作り、街に息を吹き込みたい、という想いから、2017年に立ち上げたのが「トランジション・タウン西宮」です。
これまで上映会やお話会などのイベントを通して、延べ600人以上にその想いを発信してきました。ここで生まれたつながりから、最近では「暮らしと政治カフェにしのみや」が立ち上がり、社会問題を身近に語り合う試みも始まっています。まずは、環境学習都市宣言を活かす施策を提言していくことを目指していくそうです。また、食と環境を守り、つながりの場となるファーマーズマーケット「にしのみやを農すプロジェクト」の準備も進行中。
「誰でも参加できる持続可能な未来への『トランジション=移行』活動は、いつでもメンバーを募集しています。月1回のミーティングで顔を合わせています。ぜひ一緒にやりませんか」と、永谷さん。あんのん館(カフェ「ココハネ」)で、ゆっくりお茶やランチをしながら気楽に話もできるそうです。