障害者野球チーム「ダンデライオンズ」に来たれ!(195号)
神戸市灘区の教員、井上聞三さん(52歳)は25年前に荒れた中学校野球部をまとめ上げた手腕を買われ、その後様々な球団でコーチ、監督を歴任。そして特別支援学校への転勤を機に障害者野球の道に進み、令和5年1月、障害者野球チーム「ダンデライオンズ」を立ち上げました。
部員は小学5年生から52歳まで現在22人、阪神間を中心に枚方、篠山、淡路島からも集まり、月に2、3回練習や試合を行っています。
ひとくちに〝障害〟と言っても部位や程度は様々。できない部分は皆で補い合います。脳梗塞の後遺症で左手しか使えない選手は、補球してすぐグラブを脱ぎ同じ手で返球します。また、左手首のない選手は右手1本で豪快なフルスイングを見せます。
投手で上下肢障害の石田康貴さんは、膝をついた困難な体勢から速球を投げます。一球ごとに倒れ込むのもいとわない渾身の投球に、「4歳の頃から野球ファンでした。自分も野球ができることが嬉しい、どんな形でもできる!」と石田さん。
こうなるまで選手たちがどれほど努力を積んだか計り知れません。みんな自分で自分のやり方を見つけてきたと井上監督は誇らしげに語ります。
雪が降ってもどんなに暑くても「年中無休!」と主将の川崎亮さん。副主将の中谷佑人さんも週末が楽しみでならないと話します。少年野球出身の中谷さんは学生時代に野球を離れて目標を見失っていましたが、障害者野球と出会い人生が大きく躍動し始めました。
「たんぽぽ」を意味するダンデライオンは、弱々しく見えて実は強い。踏まれても踏まれてもまた咲く、そんな心意気で歩みだして1年。井上監督は今年チームを身体障害者野球連盟に登録申請しました。加盟が認められれば公式戦を闘い全国大会に挑戦するという目標が生まれます。その期待が部員の士気を上げ、練習参加率が上がっているそうです。
部員の動体視力向上にヴィジョントレーニングを取り入れたり、監督の工夫は留まるところがありません。また、野球のルールも解さない初心者には、皆でフォローしながら成長を続けています。
今は小学校のグラウンド等を借りて練習していますが、対戦相手は中高生野球部や少年野球OBチームなど。昨年は香川や岡山、福知山まで遠征に行きました。今年は横浜遠征を予定しているそうです。
障害者野球が広く周知され、チームの笑顔と勇気が更に大きな輪を作っていくことを願っています。ダンデライオンズでは、一緒に野球をする仲間を募っています。年齢、性別不問。練習だけでも是非見に来てください。