ともも人物図 【さくらFMチーフディレクター 山内 孝一郎】ラジオ放送を通じて地域のコミュニティ事業を担う(175号)

ラジオ放送を通じて地域のコミュニティ事業を担う(175号)
ともも人物図

今年で開局20周年になるさくらFM。唯一人創立当時からスタッフとして携わってきた山内孝一郎さんに同局への想いを伺ってみました。

■阪神大震災からの開局ですね。

平成4年にコミュニティFMが制度化されていましたが、誰もそんな小さなエリアの放送局が必要だとは感じていませんでした。そこに阪神大震災がおきて、災害時には生活圏に近い地域ごとの情報が必要だとの新たな認識の上に、雨後の筍のように震災後の3年間で全国に100局以上が開局しました。さくらFMは89番目です。 当初は西宮市が放送エリアでしたが、平成28年からは芦屋市もさくらFMがカバーしています。

■生放送が多いですね。

さくらFMには放送スタジオが2つありますが、2つのスタジオを同時に録音で使用していたら、もし緊急放送が必要なときに対応ができません。
そこで、1つは必ず生放送用に確保することにしました。怪我の功名なのか、今まで録音だった番組をライブにしてみたら、反応が大きくて驚きました。パーソナリティは録音と同様に話しているのですが臨場感や緊張感が伝わるのでしょうね。それから、生放送に力を入れることにしたのです。
共に感じている「今」の空気感は何ものにも代えがたいです。

■山内さんのFMとの出会いは?

高校時にアメリカに1年留学しました。アメリカの地域FMは面白いのです。田舎でしたから学校か教会がコミュニティの場で、そこで開催されるダンスパーティやイベントの音楽をFMが担当するのです。その地元密着度に感動しました。
実は、大学時に就職の内定がでていたのですが、その会社が震災で甚大な被害を受け内定が取り消しになったのです。しばらく学生時代にボランティア活動でお世話になったYMCAでアルバイトをしていましたが、西宮でミニFMを立ち上げると聞いて、音楽が好きでしたし、アメリカのFMのイメージが膨らみ参加することにしました。

■存続の危機もあった?

株式会社ですが第三セクターということもあり、西宮市・芦屋市から相当額の出稿を頂いていますが、様々な自助努力も必要です。危機的状況もありましたが、防災の分野に強い現社長が、緊急時に電波操作で自動で電源が入り防災情報を流せるラジオの導入に注目し販売したところ、大変好評で学校や施設、携帯電話などを持っていない家庭に普及していきました。
このラジオの販売を含め、5年間で経営は飛躍的に安定しましたが、我々の目標値にはまだまだ達していません。私を含む4人の男性ディレクターはどうすれば目標を達成できるかを日々考えながら番組制作に携わっています。社員なら当然のことですが、パーソナリティのみなさんには気持ちよく放送に力を入れてほしいので、経営のことはスタジオには持ち込まないことにしています。

さくらFMチーフディレクター 山内 孝一郎さん

■ラジオも様々な局がてきましたね。

現在コミュニティFMは全国で300局以上になりましたが、近年はインターネット放送局も増えています。経費も少なくて動画配信もできますから。しかし私は、ラジオはあくまでも音声によるメディアであり、それによるイメージの膨らみが良さだと思っています。
20年携わってきて、コミュニティFMは放送事業であっても地域のコミュニティ事業が根本だと感じています。放送を通じて人と人がつながり、暮らしやすいまちづくりの一助を担っているという自負が最近生まれてきました。とももさんと同じです。

紙と電波の違いはあれど、ともに地域のコミュニティ事業者。やることは未知数、やりがいは人との出会い。つながりを生めば。まさにそれは宝物ですよね。 (武地)

◻プロフィール
1971年生まれ、西宮市出身/在住。甲南大学法学部卒。さくらFMチーフディレクター。社会保険労務士(但しペーパー)。ビールと野球とロックンロールを愛するラジオ屋。趣味:セフティーバント。
◆さくらFM株式会社 78.7MHz
西宮市池田町9-7 フレンテ西館3F

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