ともも人物図 【こどもの居場所・アートハウス主宰 前田 豊稔(ほうねん)】子どもたちを助けたい アートでひらこう身体と心(180号)
学校に行かない、なんだか行けない、学校じゃもの足りない。そんな人はここでアートをしようと呼びかける「アートハウス」。様々なアーティストが参加する子どもの居場所づくり活動で昨年暮れにオープン。この活動を主宰する前田豊稔(ほうねん)さんにお話を伺いました。
■どんなことを?
1回目は、「くしゃくしゃにした紙に命吹き込む造形」。参加した中学生のTさんは透明感のある美しい青で、海の底をイメージして作ってくれました。まるで、龍泉洞の地底湖の青のようだとの声にTさんは嬉しそうでした。粘土でアートや遊びなど様々です。
■身体活動もあるのですね。
好きな漫画のセリフを、太鼓を叩きながら自分のリズムで語ってみたり、物語を作りながら歌ってみたり。でも、話さなくてもいいし、したいようにしたらいい。
アートハウスで学ぶべき一つは、自分の身体のことだと考えています。単に立ち上がり歩いたりすることだけでも、身体を支える身体自身の動きと自覚は喜びや躍動感となり、地球と人との関係そのものを味わうことなのです。リズムよく動いたり風をはらんだりすると、生き物としての心地よさや存在感を謳歌することになる、それらは「生きていける」要素をひとつ持つことになるのではないでしょうか。
何より、身体が受け付けなくなったりすることの意味を自分自身で理解できるようになるでしょう。それは将来自由に動くことのできる身体を取り戻す期待に繋がります。
■前田さんは造形アーティスト?
美術の教師でしたから一応なんでも(笑)。先日、好きな平櫛田中氏の美術館に行ってきました。彼の造形の情念は凄いですね。お目当ての「酔吟行」には会えませんでしたが、「田中さんになろう」という子どもたちのコーナーがあり、素直な感情の表現が素晴らしかった。
■アートハウスはお母さんのためでもある?
不登校は子どもが苦しいところに居ることは理解できますが、親御さんの苦しみは見えにくい。特にお母さんの苦しみは相当深いものだったりします。子どもは自分のしていることですから、それとなく覚悟があったりするものですが、親は受け入れられなくて、自分を責め、精神が持ちこたえられなくなったりするのです。そこで、お母さんのためにもなるように、アートセラピーや母子でアートなども盛り込んでいるのです。
■様々な講師陣とは?
私たち(運営委員)がこの人にと思う彫刻家、陶芸家、演劇のプロ、人形遣い、打楽器演奏者、音楽家、作家にお願いして、多様性のとんだ講師陣で構成しています。みなさん同じような苦労の体験をもち、理解し合える講師たちです。僕なんかは未だに心が苦しいときは、身体が宙に浮いて飛んでいく感覚になるのです。人それぞれの心の開放の方法があるものです。
先日は、学校を休んでいることに負い目があるのか、子どもから授業のようにしてほしいと要望があり、直ぐに応対しました。ここは、私たちの考えを実践するためにあるのではなく、苦しんでいる子どもや親御さんたちのためにあるからです。
そして、何よりも生き物として、自由に楽しく動くことができるようにと願って活動しているのです。
4月からは元教師で児童文学者の岡田淳さんによる演劇ワークショプ特別プログラムが始まります。内容もさることながら、講師との出会いも魅力ですね。(武地)
◻プロフィール
1947年生まれ、西宮在住、神戸大学大学院修了。国公立小中学校美術教諭を経て、甲南女子大学准教授。現在豊岡短大准教授。
■アートハウス 会場:西宮北口のプレラまたはアクタにて 日時:毎週木曜16:30~18:00 対象:思春期を主に年令問わず 費用:月4回 6000円(材料費部屋代を含む)
連絡先:TEL090-3712-3462 http://www.arthouse-nishinomiya.com/