西宮・浜脇のふるさとづくり~「えびすかき」から「人形浄瑠璃」へ(186号)
この10月に西宮市立浜脇中学校の生徒会のみなさんが人形芝居「西宮戎舞」に挑戦しました。これは、ふるさとの歴史や文化を学び地域に誇りをもってもらおうと、戎座人形芝居館が2009年から始め、毎年西宮市主催で「西宮浜脇のふるさとづくり~えびすかきから人形浄瑠璃へ」を開催しています。
■浜脇中学校の生徒会のメンバーが人形浄瑠璃に挑戦!
世界無形文化遺産で知られる文楽・人形浄瑠璃の始まりは、全国に戎信仰を広げた人形操りの「えびすかき」と言われています。この貴重な文化遺産を再興し(2006年)、地域文化による潤いのある故郷づくりを目的にした活動が「西宮浜脇のふるさとづくり」です。戎座人形芝居館が主体となり、西宮浜脇のふるさとづくり実行委員会として地域(浜脇自治連合会・浜脇小学校、浜脇中学校、県立西宮香風高校、県立西宮高校、西宮神社、西宮中央商店街、浜脇香櫨園エココミュニティ会議、地域企業)が協働しています。
昔は「おらがむら」と言われるように、地域の心の拠り所は小学校であったことから会場は浜脇小学校の体育館。内容は、まず地域の文化遺産である「えびすかきによるえびす舞」を人形芝居えびす座が演じ、続いて3人遣いの「西宮戎舞」を浜脇中学校の生徒会のメンバーが演じます。その後に、江戸時代にえびすかきが伝えた人形の技が南あわじで淡路人形浄瑠璃に発展した歴史を踏まえ、南あわじ市立南淡中学校の郷土芸能部のみなさんに、日頃、稽古に励んでいる淡路人形浄瑠璃の得意演目を演じていただくというもので、両中学校の競演が見どころとなっています。
浜脇中学校は、歴代の校長や教頭先生が推奨して生徒会の9人が挑戦するのが恒例となりました。口上、太夫、太鼓、人形遣い(えべすさまと庄屋さん)をそれぞれが担い、西宮戎舞研究会の指導のもと約4日間で仕上げます。
まったく、知らなかった太鼓や太夫語り、人形遣いに戸惑いながら、めきめき上達して立派に演じ切る姿に毎年感動の声が沢山寄せられます。今年の生徒たちからは「コロナで制限された学校生活の中で、この貴重な地域の芸能に携われたことに感動した。地域の芸能の歴史を知り故郷に誇りを持てた。9人で一丸となって取り組んだ達成感は得難い。自分たちの子ども世代に伝えていきたい」と話します。
今年はコロナの感染防止を考慮し、会場での上演は中止し動画撮影したものを編集してオンライン配信(YouTube)しました。10月に催された西宮市民祭りの参加団体としてリンクし、多くの市民に見てもらえるような新しい取り組みとなりました。
「毎年、指導にあたる人形芝居えびす座や戎舞研究会、そして、地元の小中高学校や自治会や団体企業が会場づくりや準備を手伝い応援することで地域力が高まります。コロナで変更が余儀なくされましたが、様々な工夫をすることで新たな展開も生まれました」と実行委員長の小部さん。
文化を構成する人々の豊かな感性が、次世代の感性を豊かなものにします。地域一丸となって開催することこそ、潤いのある町への一歩。コロナ感染対策をとりながら工夫して実施したことにより、関係者それぞれがより大きな喜びを得たようです。「この指止まれ」で、できることで参加するコロナ後の地域社会を見据えた取り組みになったと感じました。(武地)
※この記事は、西宮文化協会12月号に西宮文化協会理事を担う編集長武地が掲載したものです。
★当日の動画は、人形芝居えびす座のYou Tube「西宮・浜脇のふるさとづくり2021『えびすかき』から『人形浄瑠璃』へ」(https://youtu.be/_KWnxvbSLBk)から視聴できます(西宮市民まつり参加団体からも検索可)。
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