高齢者とてんかん ②【つちやま内科クリニック 土山雅人(日本神経学会専門医)】(173号)
ヘルスコラム
てんかんは脳の異常な電気活動による発作を繰り返す病気です。脳内の部分的あるいは全体的な電気活動が何らかのきっかけで過剰になると、てんかん発作が起こります。そのため、過剰な電気活動がどこに起こったかによっててんかん発作の症状は異なります。
脳は各部位によって働きが異なります。脳の中には手を動かす神経、脚を動かす神経、身体の各部位の感覚を伝える神経、嗅覚や視覚に関わる神経など様々な働きの神経が存在します。そのため各部位の過剰な電気的興奮によって、手だけが勝手に動く、脚だけが勝手に動く、身体がしびれる、変なにおいがする、視界の中に光が見えるなどの様々な症状の発作(部分発作)が生じます。一方、脳全体が過剰に興奮すると意識を失なったり、全身のけいれんをきたすような発作(全般発作)が起こります。
特に高齢者では、側頭葉に焦点を持つてんかん発作が多いことが知られています。側頭葉は聴覚や味覚、自律神経系に関係しているだけでなく、記憶や情動などにも関与しています。高齢者のてんかんではこれらの働きを反映する発作症状が見られます。なかでも記憶に関する発作症状が出た場合には「物忘れ」をきたすので、認知症との鑑別が重要になります。
つちやま内科クリニック 土山雅人(日本神経学会専門医)
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